新規就農するときに最初に考えるべきこと7選

ゆっきー

就農するときに考えなければならないポイントがあったら教えてほしい。

最初に考えるべきことは主にこの7つ。

特に7つ目は就農する上で一番大切なことです。

  1. どこで就農するか
  2. どれくらい稼ぎたいか
  3. どんな作物を作るか
  4. どうやって売るか
  5. 誰と農業するか
  6. 就農資金について
  7. どんな生き方をしたいのか

①~⑦を別々に考えるのではなく、総合的に考えていきましょう!

1.どこで就農するか

「どこで農業するか」と同時に「どこに住みたいか」を考えるべきです。

  • 農業する環境
  • 住みたい場所

気候と土地の条件

農作物の生育に最も影響を与えるのが、気候と土壌の質です。

例えば、寒冷地では耐寒性のある作物が適しており、温暖な地域では収穫期間が長くなる傾向があります。

また、土壌の質も作物の選定に関わります。

地元の農業協会やインターネットを利用して、就農を考えている地域の気候と土壌の特徴を調べましょう。

北海道は、冬は雪が積もるから12月~2月初めまでは農業は完全オフシーズン。2月から農業始める場合は暖房費が結構かかります。

インフラとアクセス

農地だけでなく、生活インフラや流通インフラも考慮することが大切です。

特に、収穫後の出荷や販売ルートが整備されているかは、農業経営に直接関わります。

また、日常生活に必要な病院や学校、商店があるかどうかも確認しておきましょう。

移住後の生活の質に大きく影響してきます。

地域のサポートとコミュニティ

農業はひとりでやるには難しい部分が多いため、地域コミュニティの支援が非常に重要です。

新規就農者を歓迎する地域や、研修プログラム、支援金制度が整っている場所は、特に初心者にとって大きな助けとなるでしょう。

また、地元の農業者や自治体との良好な関係も、農業の成功に欠かせません。

自然環境や景観

農業は長時間屋外で作業するため、自然環境や周囲の景観が働くモチベーションに影響します。

例えば、山や海が近い場所であれば、作業の合間にリフレッシュできる環境が整っていると、心のゆとりを保ちやすくなります。

自然との共生を感じられる場所で働きたいと考えるなら、地元の風景や自然環境も重要なポイントです。

生活費と時価

就農地の選択には、生活費や農地価格も無視できません。

都市部に近いほど生活費や農地価格が高くなりがちですが、地方では比較的低コストで生活できることが多く、農業に集中できる環境が整っています。

また、自治体によっては農地購入や借りる際の補助金制度もありますので、しっかり調べておきましょう。

2.どれくらい稼ぎたいのか

就農して「どんな生活をしたいか」を考えてみましょう。

  • 自分たちが生きていけるだけのお金を稼いで、田舎でのんびり暮らしたい
  • 大規模農業で従業員を雇用して、法人化してどんどん稼ぎたい

この考え方が違うだけで、目標とする収入も大きく違ってきます。

3.どんな作物をつくるか

作物選びのポイント

  • 目標収入に応じた作物を選択
  • 露地栽培かハウス栽培か
  • 自分の興味や情熱

収入目標に合わせた作物選びは、農業経営の核となります。

例えば、トマトやイチゴなどの高収益作物は比較的収入を得やすい一方で、管理や初期投資も大きくなります。

逆に、リスクを抑えた小規模な家庭菜園的なスタートを考える場合は、栽培が容易で収益の安定しやすい作物が向いているかもしれません。

収益性だけでなく、自分の興味や体力といった要素も考慮し、適した作物を選ぶことが重要です。

夫はトマトが食べられないくらいのトマト嫌いですが、なぜかトマトで就農することになりました。

露地栽培

露地栽培は、温室を建てるための費用がかからない分、初期投資が比較的少なく済むため、新規就農者にとっては始めやすい方法です。

気候や天候の影響を受けやすく、特に大雨、台風、干ばつ、霜といった異常気象に弱いです。過度の雨や強風による作物の損傷や、日照不足、極端な温度変化は生育に大きな影響を及ぼします。特に収穫時期と異常気象が重なると、収穫量が激減するリスクもあります。

ハウス栽培

ハウス栽培は、露地に比べて初期投資が高額になる反面、安定した生産が見込める点がメリットです。特に、トマトやイチゴ、キュウリなどの高収益作物を栽培する場合、温度や湿度を一定に保てるため、品質を高く維持しやすく、収益性も高まります。

しかし、ハウス栽培は施設費用だけでなく、温度管理のための燃料や水道光熱費、機器のメンテナンス費用もかかるため、資金計画をしっかり立てる必要があります。

作物選びは、収益性からライフスタイル、さらには地域の特性まで、さまざまな要素を考慮する必要があります。

自分の興味や生活スタイル、地域の気候や市場の需要に合わせた作物で選んでみましょう。

4.どのように売りたいのか

作物の販売方法は、各方法のメリット・デメリットを考慮して、自分の経営方針やライフスタイルに合ったものを選ぶことが大切です。

たとえば、安定収入を重視するなら契約栽培、ブランド化を目指すなら加工品販売やネット販売を検討するなど、目指すスタイルに合わせた戦略を選びましょう。

また、複数の販売方法を組み合わせることで、収益の安定化を図るのも効果的です。

JAの力が強い地域では、全部JAに出荷することが強制のようになっているところもあります。JA以外で販路を考えている人は、その地域のJAの力関係も考慮してください。

JA(農業協同組合)

日本で最も一般的な農産物の販売方法は、JA(農業協同組合)への出荷です。

JAは全国に広がる流通ネットワークを持ち、多くの農家にとって安定した販売先として利用されています。

地元の直売所やマルシェ

直売所やマルシェでの販売は、自分の作物を地域の消費者に直接届けられる方法です。

地元の人たちとのつながりが深まるため、リピーターを得やすく、口コミでお客様が増える可能性もあります。さらに、出荷コストがかからない分、手取り収益が高くなる場合が多いです。

ただし、販売は一日に限定され、売れ残りのリスクもあるため、収入が安定しにくい点がデメリットです。

また、直売所やマルシェに参加するには自分で搬入する手間がかかるため、手軽さを求める方には向いていないかもしれません。

契約栽培

契約栽培とは、スーパーやレストラン、加工会社などとあらかじめ契約を結び、指定された作物を栽培して納品する方法です。

安定した出荷先が確保されるため、収入の見通しが立てやすいのが大きなメリットです。

また、価格や数量も事前に決まっていることが多く、収入が安定しやすい傾向にあります。

一方で、契約内容によっては厳格な品質基準が求められることが多く、契約を守るために栽培や管理により多くの手間がかかる場合もあります。

また、納期も契約で定められるため、収穫時期に天候不順が重なると、納品に間に合わせるための負担が増えることがあります。

ネット販売

近年、インターネットを活用した販売も増えています。自分でECサイトを立ち上げるほか、農産物に特化したオンラインマーケットに出品する方法もあります。

インターネット販売は全国の顧客にアプローチできるため、地域の枠を超えて多くの人に作物を知ってもらうことが可能です。

ただし、梱包や発送の手間がかかり、管理業務も増えるため、余裕のある体制や作業効率化が求められます。

また、口コミやレビューが重要なため、品質管理を徹底して顧客満足度を高める努力が必要です。

飲食店やカフェへの直接販売

自分の作物を飲食店やカフェに直接卸すのも一つの方法です。

新鮮な作物を提供できることで、店との信頼関係が築ければ、継続的な取引につながりやすいです。

レストランやカフェで使用されることで、自分の作物を多くの人にアピールする機会にもなります。

ただし、直接販売は数量が安定しにくく、店舗のニーズに応じて出荷量が変動しやすいというデメリットがあります。

さらに、店舗ごとのこだわりや要求に応える必要があり、作物の質や品種を工夫することが求められることもあります。

加工品として販売

収穫した作物を加工品にして販売する方法もあります。

例えば、トマトをソースやジュースに加工したり、イチゴをジャムにしたりすることで、賞味期限を延ばし、売れ残りや価格変動のリスクを軽減できます。

加工品は一般的に高価格で販売でき、ブランド化することで収益性を向上させる可能性があります。

ただし、加工品を製造するには加工施設が必要になり、設備や法的な手続きにかかるコストもあります。

また、加工品の販売には商品の企画やパッケージング、プロモーションといった幅広い知識と工夫が求められるため、ハードルが高くなる場合があります。

農業体験や観光農園を取り入れる

最近では、農業体験や観光農園を開設し、作物の販売に加えて観光客の集客も行う農家が増えています。

収穫体験や農作業体験、イベントを通じて地域の活性化にも貢献しながら、自分の作物を多くの人に知ってもらえる利点があります。

また、来園者とのふれあいを楽しめる点も魅力です。

ただし、観光農園は手間がかかり、準備や運営、接客に多くの労力が必要です。

また、観光客が訪れやすい場所にあることが条件になるため、立地によっては実施が難しい場合もあります。

5.誰と農業するのか

一人で農業に取り組むのか、それとも夫婦や家族で協力して行うのかで、日々の運営や初期の計画にも大きな影響を与えます。

就農する前に、どのような形で農業を進めるかを検討しておきましょう。

夫婦で就農する

新規就農は「夫婦で就農」を勧めている地域が多い印象でした。

私たちが短期研修を受けるときも「できれば奥さんも一緒にきてくださいね」と言われました。

周りの新規就農の先輩たちをみると、夫婦で研修を受けて、夫婦で就農されている方が最も多いです。

ひとりで就農する

次に多いのが、旦那さんだけが就農して、奥さんは別の仕事をしているというパターン。この場合、奥さんの仕事は看護師であることがダントツ多いです。

単身で就農されている方もいます。アルバイトも雇わずに本当にひとりでやっておられます。しかも結構上手です。この方を見て、ひとりでも就農できるもんなんだ、と思えました。

友達と就農する

友達と一緒に新規就農された方もいます。この場合、どっちが社長やるのか決めた方がいいよ!とアドバイスされていました。やっぱりビジネスですし、お互い主張し合うと上手くいかない傾向にあります。夫婦で農業やる場合も同じことが言えます。

私は旦那の農業方針や栽培方法については口出ししないようにしています。「これを手伝って」と言われたことを「はい」とやるのが一番仲良く農業できるコツな気がします。

6.就農資金

農業を始めるにあたって、計画的に「就農資金」を確保することが成功の鍵を握っています。農業は初期投資が大きくなりがちで、また収益が安定するまでには時間がかかるため、しっかりとした資金計画が重要です。ここでは、就農資金を考える際のポイントをいくつかご紹介します。

初期投資を明確にする

まず、どのような農業を行うかによって初期投資の内容が変わります。

例えば、ビニールハウスなどの施設栽培は設備投資が必要ですが、露地栽培であればその分設備コストが抑えられます。

土地の整備や機械の購入、種苗の費用、さらに倉庫や保管設備の準備など、初期に必要なものをリストアップし、その費用を計算しておくと良いでしょう。

考慮するべきポイント
  • 農業研修中の生活費:研修中等、無収入の時の生活費
  • 土地の取得・整備費用:農地の購入や賃借、整備にかかる費用
  • 設備投資:ビニールハウスや灌漑設備、トラクターなどの機械類が必要かどうか
  • 初年度の運転資金:種苗、肥料、農薬などの資材費と、生活費や日々の運営資金を含めた予算

自己資金と融資のバランスを考える

自己資金がどのくらいあるかによって、資金調達の方法も変わってきます。

自己資金だけで賄うのが難しい場合は、銀行や農協の融資を検討することも一つの方法です。

また、自治体や政府が提供する新規就農者向けの補助金や助成金を活用することもおすすめです。

これらの制度をうまく利用することで、資金負担を軽減しながら安定したスタートを切ることができます。

考慮するべきポイント
  • 融資や助成金の調査:自治体や農協が提供する新規就農者向けのサポート制度を確認する。
  • 返済計画の作成:融資を受ける場合は、無理のない返済計画を立て、収益が安定するまでの資金繰りを考える。

運転資金を確保する

農業は季節や天候によって収入が変動しやすく、収益が安定するまでには時間がかかることが多いです。

そのため、収入が得られるまでの期間や、収入が不安定な時期を乗り越えるための運転資金が必要です。

最低でも1~2年間は生活費を確保しておくことが理想的です。

考慮するべきポイント
  • 生活費の見積もり:初期収益が得られない場合に備え、家族の生活費も含めた予算を設定する。
  • 予期せぬ出費への備え:天候不良や病害虫被害など、不測の事態に対応するための予備資金を確保

私たちも就農する前に、1カ月に何にどのくらいお金を使ってるのか書き出して、1年間の生活費を計算したよ。

長期的な収支計画を立てる

農業の成功には、収益がどのように増えていくかという長期的な視点が必要です。

例えば、1年目に赤字であっても、2~3年目で黒字転換を目指すなど、計画的な収支シミュレーションを作成することで、農業経営が安定しやすくなります。

また、収益を再投資し、規模拡大や品質向上を目指すための計画もあると良いでしょう。

考慮するべきポイント
  • 収益のシュミレーション:作物ごとの収益予測を立て、どのタイミングで黒字化するかを見通しておく。
  • 設備の更新・拡張費用:将来的な設備投資や品質向上のための再投資についても、長期計画に組み込む。

農業は計画的に進めれば長期的な成功が見込めますが、無計画では予想外の出費に追われてしまうこともあります。

ぜひ事前に資金の準備をしっかりと行い、安定した農業経営を目指してみてください!

7.どのように生きていきたいのか

農業はただ作物を育てて収益を上げるための手段だけでなく、生き方や人生そのものと深く結びつく仕事です。

就農を考えるときには「どんな生活を送りたいか」「農業を通して何を実現したいのか」を明確にすることが、長く続けていくうえでの支えになります。

  • 農業がライフスタイルにどんな価値をもたらすのか
  • 農業の先にどんな人生の目標があるのか

実際に新規就農した人の話では、家族との時間を考えている人が多い印象でした。

会社で働いている時は仕事ばかりで全然家族と一緒にいられなかった。家族と過ごす時間を大切にしたくて就農を考えた。

先輩1
先輩1

子どもたちに自然の中でのびのび育ってほしいなと思って、子どもが生まれたタイミングで就農を考えた。

先輩2
先輩2

農業を通じて、どのような価値観を大切にし、どんな生き方をしたいのかを考えることが、結局は「どこで就農するか」「どの野菜を育てるのか」「どうやって売るのか」につながってきます。

さいごに

就農前に農業への希望や理想は考えれば考えるほどたくさん出てきます。

私も「景色の良いところで旦那と一緒にのんびりトマトを育てて生活できたら幸せだな」と考えていました。

でも、いざ就農してみると希望通りにはなかなかいかないもんです。

そして、意外に出費がかさむものです。(補助金や助成金をもらっても全然足りません。)

全部が理想通りになんて絶対ありえないけれど、農業やるときに「これだけは譲れない!」というものがあれば、先に周りの人に伝えておくことも大事です。

そうすれば、周りの人たちが協力してくれることも多いです。

そのためにも、まず初めに自分の中で「農業を通して何を求めるのか」を明確にして、できるだけ自分の理想の農業をスタートできるように準備しておきましょう!

ABOUT WE
よっしー&ゆっきー
よっしー&ゆっきー
トマト農家/看護師
よっしー(夫):会社員生活にピリオドを打ち、農業を始めるため北海道へ移住。 2年間の農業研修を終え、トマト農家となる ゆっきー(妻):看護師。夫の「農業をやりたい」という提案には安易に賛成。 看護師を続けながら、農業もちょいちょいお手伝いしている
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